大阪選手がうつであったことを告白したニュースを見て、驚くとともに、胸が締め付けられる思いでした。
世界レベルで戦う人が背負うものというのは、わたしのような凡人には想像がつかないものです。
そんな中で毎日頑張ってきた彼女が、そしておそらく繊細な方である彼女が、自分が病気であることを告白するというのは、ものすごく勇気がいるものだったことでしょう。
どうか、ゆっくり時間をかけて休養してほしいです。
でも、わたしが一番驚いたことは、この告白に対して一般の人からネガティブなコメントがたくさんあったことでした。
「プロとしてお金をもらってるんだから、インタビューくらいやれ」「あんな大きな大会で優勝できるのに、うつなんてありえない」などなど。
大阪選手がうつであることを理解できない、ということはわたしにも理解できましたが、、、批判している人たちは何かが欠如しているように感じます。
メンタルヘルスに関して、わたしがとても信頼している下園壮太先生がこの件に関してどう考えるのか、ぜひ意見を聞いてみたいなと思っていました。
ちょうど先生のブログ(下園壮太公式ブログ)に「大阪なおみさんのうつについて」というタイトルでアップされていたので、引用させていただきます。
理解するための3つのポイントがある。
1つ目、第2段階うつ。私はうつ状態を3段階に分けている。第2段階は、いつもの刺激や活動が2倍つらく感じる状態。しかしこの段階では、気合を入れて、いつも以上のパフォーマンスを挙げる人も多いのだ。だから周囲には、うつには見えない(これを私は「表面飾り」と呼んでいる)
「大阪選手がうつだったら、あんなプレーは出来ないだろう」という人は、このうつの第二段階、いつもの活動が2倍つらく感じても、気合を入れていつも以上のパフォーマンスを挙げる、というのを理解していないのでしょう。
2つ目、うつの痛いところ。うつには症状がある。例えば、足を骨折すれば歩くのは痛いが、手作業はできる。骨折していてもEスポーツはできるだろう。ただ症状のある足をちょっと動かそうとすると激痛が走る。
うつの痛いところとは、不安感、自信のなさ(無力感)、自責感、負担感。どんなにお金があっても、大会で優勝しても、ネットを見れば、自分を攻撃する人が大勢いると感じ、自分にはその人たちをどうすることもできない、今後何をされるかわからない(もしかしたら命を狙われるかも)と不安になる。振り返ると自分がその種をまいている部分があるように感じる(自責)。こうなると、どういう質問を受け、どう報道されるかもわからない記者会見は、怖い場になる。敵の反感を買う可能性のある場なのだ。うまく乗り越えようとしても、とてつもなく負担で避けたくもなる。うつのクライアントで、一人仕事はできても記者会見やプレゼンなどの公共の場がつらいという人は多いものだ。
「たかが記者会見で」とか、「記者会見やることもプロの責任のうち」、という人は、この不安感、無力感、自責感、負担感の理解が欠如しているのでしょう。
3つ目、死にたい気持ち(死にたいほどのつらさ)
本人が表明していないから、あまり触れられていないが、うつの2段階以降は、死にたい気持ちが生じやすい。苦しさが、2倍、3倍になる。それは、この苦しさを止められるなら、死んでもいいと感じるぐらいつらいのだ。
この「程度」を一般の人は理解できない。例えば、10キロの重りをもって歩く人が、20キロの重りを担いでいるようなつらさに感じるのが2倍。何とか耐えて歩けるかもしれない。でも、30キロの重さの感じがずっと続くとなったらどうだろう。
大阪なおみさんが、このつらさが続くのならテニスなんて止めてもいい、と感じるのは普通のことだ。 下園壮太公式ブログ
本人の辛さ、苦しさはどのくらいのものなのか、他人のわたしたちにはきちんと理解できません。
それなのに、勝手に「たいしたことない」と言っていいわけがありません。
うつ症状を理解するには、うつそのものについて理解しておかなければいけないことがたくさんあります。
表面的に元気だからうつではない、お金もらっているんだからやるべきことはやれ、と決めつけるのは、うつへの理解が欠けていることに気が付きました。
何か行動をおこす時(話す言葉であれ)にモチベートになるのは、愛や慈悲、優しさでありたいし、相手に敬意をもって理解する努力をしたいと思う一件でした。
人との距離も大切↓